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宇宙実験の総合サポート担当インタビュー 上山副主任 実験運用管制官

「きぼう」を利用する宇宙実験の運用や準備が民活

─まず現在担当されているお仕事について、教えていただけますか?

「きぼう」の運用管制室「きぼう」完成(船内及び船外の実験施設が完成)

─宇宙実験の総合サポート担当としての具体的な仕事について教えてください。

日本の国際宇宙ステーション「きぼう」は何のためにあるのか?というと、多くの人に利用してもらうためと言っても過言ではありません。
実験研究者などユーザさんが一番偉いので最上流としますと、JAMSSの仕事はまず、「ユーザーインテグレーション」から始まります。ユーザさんのアイデア(実験計画など)を分析し、技術的にどのように実現していくかを設計する重要な仕事です。この仕事によって計画がきちんとできれば、次に国内外各方面とのさまざまな調整や機材の準備、輸送、実験の手順書作成、宇宙飛行士や運用要員の訓練・リハーサルなどを行う「実験運用準備」、そして本番である「実験運用」へと進んでいきます。
ひとくちに実験と言いましたが、高度な実験装置を使った科学実験のほか、装置をあまり使わない教育・芸術活動のようなものもあります。ここではまとめて実験運用と呼んでいます。

─そうした利用のさまざまな形態について、もう少し教えてください。

物理学や生物学のような科学実験が圧倒的に多いのですが、教育、芸術、宇宙医学なども重要です。このほか、「有償利用」と言う新しいジャンルが最近出来ました。これは、ビジネスライクに利用料金を払って宇宙飛行士に何かをやってもらうという制度で、企業がPRに使ったりすることが多いですね。たとえばロッテのキシリトールガムのプロモーションなど、すでに有名ですが、もちろんこれらもJAMSSが技術サポートをしているんですよ。
どんな利用形態であっても、ユーザーインテグレーション、実験運用準備、実験運用という一連の仕事は基本的に同じです。

─JAMSSでは実験装置も作っているのですか?

開発には時間(最低3~4年)とお金がかかりますから(笑)、主たる実験装置の開発自体はJAXAが行っています。JAMSSはその装置を使った利用活動を支援しているのです。

─宇宙飛行士たち(クルー)への訓練も行うのですか?

クルー訓練は実験運用準備の中でも大変重要な仕事です。実際に飛ぶ予定のクルーに日本に来ていただいて、JAMSSのインストラクターが実験装置の本物そっくりのモデル(グランドモデル)を使って教えるんです。
宇宙実験の多くは宇宙飛行士と地上の管制要員の連携プレーで成り立っています。つまり、試料のセットや細かい操作などをクルーにやってもらい、地上から装置の遠隔操作ができる部分は実験研究者の先生をサポートしつつ、地上管制要員が行うことになります。
この連携プレーは「ODF」と呼ぶ手順書に従って遂行されます。
ODFが間違いなく適切に出来ていること、JAXAそしてNASAの承認を取っていること、ODFに従いクルーも管制要員も訓練ができていること、これらがあって初めて本番の実験運用に臨むことができるのです。
ですから宇宙飛行士と同じぐらい管制要員にも訓練が必要なのです。シミュレーションと呼んでいますが、新しい実験に向けて、実戦さながら、いやむしろ実際よりも厳しい状況を想定したシナリオを組んで管制要員の訓練を行います。さまざまな不具合、不測の事態を想定して、本番で慌てず適切な処置ができるようになるまで何回も繰り返します。こうしてJAMSSの実験運用管制要員は鍛え上げられていくのです。
私は2009年2月に管制要員に認定され、実験運用業務に本格的に携わることになりました。一つの実験をやり遂げた時の達成感とクルー、研究者、そして他の管制要員たちとの一体感は、言葉にならないほど素晴らしいものです。

─管制官に必要なものってなんでしょうか?

─今言われたことが主な業務と言うことでよろしいでしょうか?

まだまだあります。たとえば、利用計画立案。宇宙でやる実験のスケジュールなどを各国と調整する仕事です。
国際宇宙ステーションには6人のクルーがいますが、彼らは掛け持ちで各国の実験をやっているわけです。だからいわゆるぶんどり合戦があるわけですよ。電力や宇宙飛行士の作業時間(クルータイム)は、国際条約で割り当てが決まっていて、日本は12.8%。この配分の中で、うまく実験をスケジュールして、国際的にもそれを通さなければならない。 この重要な仕事はJAXAさん主体で行いますが、JAMSSは調整の現場できめ細かく交渉をサポートしています。 そして保全補給。実験を計画通り遂行するために、実験試料はもとより装置の交換部品をうまいタイミングで打ち上げるために、計画を立て、地上輸送、梱包、宇宙機への搭載準備やデータの作成、国際調整などをサポートしています。

─管制官に必要なものってなんでしょうか?

─今後の課題は?

利用テーマの創出をいかにサポートできるかです。利用テーマあってこそ、「きぼう」が宇宙に存在する価値があるのです。実験や文化・芸術事業はJAXAが定期的に公募していますが、これからは有償利用も促進したいと思います。有償利用が多くなるということは、利用が多様化すること、宇宙ユーザが広がることを意味します。「きぼう」をさらに有効に、さらに長期に使うために、JAMSS全体で作戦を練っています。

─民間の方にアピールしたいこと、誇れること、などありましたら。

実験機器や試料の打上げ便のスケジュール変更や、いろいろな不測の事態にも負けず、実験運用を支えているということ、これが私たちの誇りです。

現在「きぼう」が宇宙にありますので「宇宙でこんな実験をしてみたい。宇宙飛行士にこんなことをやってもらいたい。」といったご要望があれば、出来る限りのサポートをさせて頂きます。宇宙に日本の実験室があるのですから、どんどん利用して頂きたいと思います。