THE FUTURE IS NOW

 「こうのとり」カーゴインテグレーション担当 奥井主幹技師インタビュー 奥井主幹

お客様から預かった荷物を無事に届ける。

─まず現在担当されているお仕事について、教えていただけますか?

「きぼう」の運用管制室

─現在担当されているお仕事について、教えていただけますか?

HTV(H-II Transfer Vehicle:国際宇宙ステーション補給機)のカーゴインテグレーションを主に担当しています。HTVとは、宇宙飛行士が国際宇宙ステーション活動を行うのに必要な物資(食料・水・衣料等)を始め、バッテリー等の国際宇宙ステーション交換機器、そして様々な実験装置等を地上からH-IIBロケットで打上げられ国際宇宙ステーションまで運搬する輸送機です。カーゴインテグレーションというのは、このHTVで輸送するカーゴを安全・確実に国際宇宙ステーションに送り届ける一連の作業です。言ってみれば、国際宇宙ステーションへの宅配便サービスのような仕事です。


先ず国際宇宙ステーションの全体取りまとめを担当しているNASAからHTVで運ぶカーゴリストが送られてきます。このカーゴの内容につきNASAと調整を進めながら、HTVの何処に配置するかを重心最適化プログラムによって決めていきます。カーゴは、通常バッグに収納されているのですが、カーゴの大きさに応じて、ハーフサイズ,標準サイズ,ダブルサイズ,そしてトリプルサイズと4種類のバッグがあります。標準サイズのバッグに換算した場合、HTV一機当りで208個程度のバッグが搭載されることになります。又、カーゴ配置は、取出す時の作業性や打上げ直前に搭載する必要のあるもの等、重心特性以外の制約もあります。


又、カーゴは日本の物ばかりでなく、米国(NASA)やヨーロッパ(ESA)のもの等多岐に渡ります。カーゴを入れたバッグが、これら海外から日本に運ばれてきた時の輸入に関する諸手続きを始め、高圧ガスや電波法等々の日本国内の法規上の制約に対する諸手続きの支援等も、HTVを打上げる種子島宇宙センターまでのカーゴの輸送を円滑に進める上での必要な作業です。 更に、HTVが国際宇宙ステーションから離脱するときに、NASAからの要求に応じてステーション内の不用品を HTVに搭載して廃棄するのですが、その時も、どのような配置でHTVに搭載するかをNASAに提案して調 整するのも重要な作業の一つです。

─管制官に必要なものってなんでしょうか?

「きぼう」の船内実験室の内部宇宙ステーション補給機(HTV)、ISSに無事結合

─カーゴインテグレーション業務の面白い点、苦労している点などについてお聞かせください。

日本の大きなプロジェクトに参加できる喜び、自分の一つの間違いが大きな影響を及ぼすかもしれないという緊張感もまた、やりがいとなって楽しいです。それに、HTVは我が国で初めての軌道間宇宙輸送機であり、色々と目新しいこともあって、その都度自分で色々考えながらNASAやJAXAそしてHTV開発関連メーカーを始め日本国内の関連諸官庁等と調整しながら業務を進めていくというのも、また日々変化があることと共に、その中で自分の提案が認められて実務に反映されていくのも楽しい一面です。


HTVで運ばれるカーゴは、号機毎に異なり、その都度色々と新しい調整作業が発生していくので、仕事がマンネリ化することなく、変化があって楽しみです。


苦労している点では、直前になって、カーゴのキャンセル・変更等が発生し、重心位置合わせの為の配置変更等に苦労しています。場合によっては、時間との勝負ということにもなります。
又、HTVは、まだまだ発展性を持った宇宙機で、仕事を通じて将来へ向けての改良・機能向上等を考えるのも、楽しいひと時です。

──改良・機能向上というと、具体的にどのような?

例えば、今のHTVはいわゆる使い切り型で地上へ帰還するという回収機能は備えていません。ステーション離脱時にごみを持ち帰って大気圏で機体と共にこれを焼却するという、これはこれで重要な役割を持っているのですが、実験結果試料を持ち帰ったり、将来の有人用宇宙機へ向けても、回収機能は今後の我が国の宇宙開発を発展させる上で、是非とも必要な技術です。


─有人宇宙機ですか、楽しみですね。

HTVは、国際宇宙ステーションにアクセスすることから、開発に当たっては信頼性・安全性の面から誘導・制御系等の重要な部分は冗長系を採用した有人仕様となっています。従って、これに回収機能と生命維持システムを付加することで、有人宇宙輸送機へ変身することが可能です。

JAMSSは、機体開発メーカーではないので、HTVの開発を直接担当・実施することはありませんが、カーゴインテグレーションを始めとするHTV運用業務を通じて、使用者側の立場に立って、現在のHTVの良い点、悪い点等を一番良く知り得る立場にあると言えます。又、公正かつ中立的立場に立って技術レベルを評価し、開発計画等を立案・検討・評価することも可能です。このような立場から、JAXAを支援して、開発に参加することは可能と考えています。

─HTVが非常に将来性のあることが、良く解りました。ところで、カーゴインテグレーションを担当するに当り、必要な能力・スキルは何でしょうか?

HTV及びJEM等の国際宇宙ステーションに係る業務全てに言えることですが、英文資料を扱っており、英語読解・作文能力は必須です。また、NASAとの技術調整等もあるので、英会話能力に加えて、調整能力等も必要です。更に、NASA・JAXA及び多企業からなるチーム作業であるため、協調性も求められます。

カーゴインテグレーションについては、先程も述べましたように、新しいミッションであること、そして号機毎に対象とするカーゴが異なること等から、作業が確立されておらず次々と前例の無い課題・問題が起きてきます。これらに対し、苦痛に感じることなく、積極的に向かっていく姿勢が必要と思います。むしろ、これをやりがいとして楽しむ位の余裕をもって仕事に取り組んでゆく態度、姿勢が必要です。

─これから宇宙開発、特にJAMSSでHTVに携わろうと思っている人達に一言。

先程もお話したように、HTV特にカーゴインテグレーション業務を遂行していく中で発生するであろう様々な課題・問題を苦痛に感じることなく、これにやりがいを感じ、積極的に取り組もうという方は、是非チャレンジしてください。
日本の宇宙開発は、今後有人化等多岐に渡る発展性をもっています。その中で、HTVは大いなる可能性を持った宇宙機です。宇宙開発を自分の一生の仕事にしようと考えている皆さんにとって、必ずやその夢や希望を満足させてくれると確信しています。