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JAMSS提供の宇宙教育「Kirara Science Program」、台湾初の成果を発表 ―導入における課題と教訓が明らかに―
2024年11月に開催されたアジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-30)の宇宙教育for All分科会において、JAMSSと国立中央大学(台湾 桃園市)が連携し実施した宇宙教育プログラム「Kirara Science Program」の成果が発表されました。本プログラムは、学生が宇宙実験に挑戦できる課外活動プログラムです。昨年、台湾で初めて実施されました。今回の発表では、主催の国立中央大学のLoren Chang特別教授から、プログラムの成果や課題、さらに今後導入する国や教育団体の参考になる教訓が共有されました。
国際宇宙ステーション船内に浮かぶKirara装置。台湾の高校生の写真を貼り、実験サンプルを搭載し打ち上げた。
宇宙教育プログラム「Kirara Science Program」とは
「Kirara Science Program」は、宇宙×創薬研究をテーマに、中・高校生が国際宇宙ステーションで行われるタンパク質結晶生成実験に挑戦できる課外活動プログラムです。JAMSSの宇宙飛行士訓練担当がプログラムを開発し、2021年に日本国内で提供を開始しました。参加者は、宇宙実験に取り組む研究者と同じプロセスを体験することができます。また、タンパク質結晶化実験を通じて、宇宙の微小重力環境が科学研究にもたらす利点を学ぶことができます。台湾でのプログラムは、2023年9月から2024年3月にかけて実施され、桃園市近郊の高校生40名が参加しました。
参加した高校生40名と関係者(国立中央大学にて)
左)条件検討実験のキット、中央・右)条件検討実験の様子
参加した学生は4名1チームに分かれ、地上で条件検討実験を行い、最適な条件のサンプルを国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げました(上記写真)。宇宙で約1か月間かけてサンプルの結晶を生成し、地上へ帰還したサンプルは台湾に返送され、国立加速器放射線研究センターの協力を得て、結晶の構造をX線で解析し分子構造を解明しました。その後、学生たちは実験結果を分析し、成果発表を行いました。約半年間のプログラムは、地球の先の宇宙への関心を深めながら、宇宙開発・自然科学・生物化学の知識を向上させる機会となりました。
宇宙実験や国際宇宙ステーションに関する講義の様子
台湾での導入における課題と解決策
今回の発表では、プログラムの成果とともに、導入時の具体的な課題とその解決策が紹介されました。以下が主な内容です。
1.宇宙利用の認知度の低さ
- 台湾では宇宙実験の経験や知識が限られていることから、プログラムに関連した講義や施設見学を強化した。
2.技術的・人的リソースの不足
- 微小重力環境での実験に必要な専門知識や施設が不足していたため、台湾の大学と研究機関が連携し、専門家の指導を受けた。
3.資金の確保
- 宇宙実験のコストを補うため、台湾教育省や地方自治体、さらに地元の産業界からの支援を受けた。
4.言語と文化の壁
- 日本語の教材を現地(台湾)向けに翻訳するため、翻訳会社を活用し、現地のニーズに合わせた内容に調整した。
国立中央大学の発表スライド(抜粋)
Authored by Loren C. Chang, Yi-ChiungHsu, and Chun-Jung Chen: “Adoption of the Kirara STEAM Protein Crystallization Program for Space Education and Capacity Building in Taiwan” Presented on November 26, 2024, at the SE4A Working Group during APRSAF-30.
今後の展望
本プログラムは、台湾における宇宙教育と微小重力実験の能力獲得の一環として、大きな意義を持つものでした。参加した学生からは「宇宙にとても興味があるので、宇宙実験に挑戦でき貴重な経験になった」「生物化学と宇宙という2分野を融合した実験テーマが刺激的だった」といった肯定的な声が寄せられています。一方で、プログラムの継続的な実施に向けた課題として、コストや運営体制の整備が挙げられました。
JAMSSでは、本プログラムを通じて得られた教訓をもとに、より多くの国や教育団体が宇宙教育プログラムを導入できるよう支援して参ります。宇宙教育はNASAやJAXAなど公的機関が提供するプログラムもある中、近年の最先端技術を専門家から楽しく学びたいという多様なニーズにお応えし、有人宇宙業界の最前線で活躍するJAMSS社員が教鞭をとり、Kirara Science Programを提供しております。今回のAPRSAFでの発表が、導入事例として多くの方々の参考となり、宇宙教育の可能性を広げる契機となることを期待しています。
▼Kiraraサイエンスプログラム
教育・プロモーション利用|サービス|有人宇宙システム株式会社(JAMSS)
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